５～１１歳ワクチン、推奨から努力義務に

本紙掲載日：2022-08-13

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「ＢＡ・２・７５（ケンタウロス）」などのウイルス派生図（佐藤圭創医師作成）

新型コロナ週刊トピック

◆３千人超えの感染者、死亡者が急増

　県内では１日当たりに報告される新型コロナウイルスの感染者数が、今週再び３千人を超えて過去最多を更新しただけでなく、死亡者も毎日発表されるようになりました。

　県立延岡病院（県病院）が入院受け入れを当面休止するなど、県北では主要な医療機関が十分機能できない事態となっています。地域医療の現状と、新たに「努力義務」となった小児向けワクチンについてリポートします。

◆急激に増す医療機関への負担

　１人から何人に感染するかの指数である宮崎県の実効再生産数は、８日時点で１・０４と、なおも増減の目安となる「１」を超えて感染者が増える傾向を示しています。人口１０万人当たりの感染者数も沖縄に次ぎ全国２番目の多さとなっています。

　心配なのは死亡者の急増です。７月２５日からは毎日報告されており、今月７日には１日の死亡者数が過去最多の６人となりました。重症者数は感染者数に比例する形で１０日程度遅れて増加するとされており、それに伴い今後は死亡者も増えていくのではないかと懸念されています。

　感染者数、入院治療を必要とする陽性患者の数ともすでに、過去最多だった２月のいわゆる第６波のピーク時をはるかに上回っており、医療機関への負担はこれから急激に高まるとみられます。

◇拠点病院で院内感染相次ぐ

　延岡市内では１０日にかけて、重症者や中等症Ⅱの陽性者の入院を受け入れる新型コロナの拠点病院でクラスター（感染者集団）とも言える複数職員の感染、濃厚接触者が相次いで確認されました。

　これに伴い、感染していない一般傷病者の入院受け入れも現在は大幅に制限されている状況です。救えるはずの命が救えない「医療崩壊」の度合いが色濃くなってきました。

　それでも、救急医療や一般診療などの病院機能を維持するため、現場では日々、ぎりぎりの調整が続けられています。医療措置が必要な陽性者も増加する中、症状が急変した場合の受け皿確保が課題となっています。

　県病院のＩＣＵ（集中治療室）やほかの医療機関を含めた専用病床は、少しでも患者の症状が改善すれば空けて、次の入院を受け入れるという自転車操業状態です。このため、宿泊療養施設（ホテル）も現在は〃入院待機所〃とも言える存在となっています

◇ワクチンは子どもにも有効

　５～１１歳を対象とする新型コロナワクチンの扱いが、これまでの「推奨」から保護者の「努力義務」へと変わりました。オミクロン株に対する有効性などの科学的知見が十分示されたとして、厚生労働省の専門家会議が８日に了承しました。

　５～１７歳への接種について「意義がある」との見解にとどめていた日本小児科学会も、重症化・死亡例の増加や、海外から集められた知見により５～１１歳でオミクロン株も含めた重症化予防効果が４０～８０％程度に上るなど、ワクチンの有効性が確認されたとして「推奨する」こととしました。

　保護者の心配が多い副反応の頻度は成人よりも低く、特に重篤な副反応は非常に低いと確認されています。まれに起こるとされる心筋炎も重篤な症状は報告されていません。

　こうした裏付けにより、同学会は「重症化予防などのメリットが副反応などのデメリットを大きく上回る」との判断を示しました。

　感染した場合の治療に有効な抗体薬や経口薬が１２歳未満には使用できないことからも、多くの医師が子どもへのワクチン接種を勧めています。

◇子どもの感染を防ぐことがまん延防止に

　感染者に占める子どもの割合はオミクロン株への置き換わりで一気に高まり、県が今年に入って確認した感染者（９日現在＝６１４１～１１万６６７９例目）のうち、１０代は１７・７％と年代別で最も多く、次いで１０歳未満が１７・０％となっています。

　子ども同士はいわゆる「３密」になる機会が多いため感染が広まりやすく、結果的に家庭内感染の主要因にもなっています。

　延岡市でも子どもの感染は多く、酸素投与が必要な中等症Ⅱ－重症例も増えているといいます。感染に伴う基礎疾患の悪化や後遺症も多く報告されるようになりました。

　一方、世界に先駆け、条件なしで５～１１歳へのワクチン接種を進めた米国とカナダでは感染者数が激減しました。この結果について、県新型コロナ対策調整本部の佐藤圭創特任医師は「子どもの感染を防ぐことが社会全体のまん延防止につながることを明確に示している」と評価しています。

◇新たな亜種ケンタウロスに備えて

　新型コロナに関して、気になる情報があります。オミクロン株の新たな亜種である「ＢＡ・２・７５（通称ケンタウロス）」です。

　５月にインドで見つかり、現在は日本を含む２０カ国以上で感染が確認されています。感染力は現在猛威を振るっているＢＡ・５より強く、国内でもじわじわと広がっています。

　現在の感染状況はピークを越えたとみられる地域もあって、佐藤医師は「県内もお盆前後がピークで、９月後半には感染者数が減少するだろう」と推測しています。

　ただ、ケンタウロスの感染が急拡大した場合は、減りきらないまま次の流行が始まる恐れもあるといいます。このため、延岡市医師会などは「そうした事態にも備えて、ぜひお子さんへのワクチン接種を検討していただきたい」と呼び掛けています。