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巨典の−−故郷は遠きにありて思うもの(18)

本紙掲載日:2022-08-13
8面

番組制作やイベントの九州ハートス・延岡出身遠田清輝さん(28)

夢は宮崎に3局目のテレビ局−映像の仕事に欠かせない「照明」の道へ
印象に残る仕事、吉永小百合さんインタビュー

 「なぜ、宮崎には民放テレビ局が2局しかないんだ!?」「よーし、こうなったら自分が三つ目のテレビ局をつくる手伝いをしよう!」。そんな志を持った少年が延岡にいました。現在、番組制作やイベントなどを手掛ける九州ハートスに勤める遠田清輝さん(28)です。

 遠田さんは、延岡市立恒富中学校から聖心ウルスラ学園を経て福岡の専門学校・九州ビジュアルアーツ放送学科へと進みます。そこでの職場体験で、ドラマ撮影の現場に助手として参加。「テレビや映画などすべての映像の基礎に、照明は欠かすことができない」と、誇りを感じたことがきっかけで、「照明」部門への道を歩みます。

 しかし、その道は決して平たんではありませんでした。撮影現場では、夏の太陽と冬の太陽の違いを照明で表現したり、俳優さんのほうれい線や目尻のシワを照明で目立たないようにしたりと、多種多様なテクニックが要求されます。神経がすり減るような毎日が、一期一会の真剣勝負ですが、うまくライティングができた際には、えも言われぬ達成感が生まれてくるのだそうです。真摯(しんし)に仕事に取り組み、照明マンとして成長し、今や中堅。同僚の信頼も厚い遠田さんも、昔は「『さぼり癖』があったんですよ」と笑います。

 恒富中のバスケットボール部に所属していた時、英語の試験で合格点が取れず、何と体育館のバスケットボールコートの横に机を置いて追試の勉強をさせられた経験があるそうです。「恥ずかしい思い出ですが、今ではとても感謝してます。あれで私のさぼり癖が治ったのですから(笑)」

 「最も印象に残っている仕事は何ですか」と尋ねると、何と、大女優吉永小百合さんのインタビュー撮影にスタッフとして参加したことだそうです。

 当時24歳。吉永さんの美貌、丁寧なあいさつや受け答えにすっかり魅了され、その美しさをさらに際立たせたいと、照明をより多くつけて撮影に臨んだそうです。そのことを、まるで思春期の少年のように、熱くうれしそうに語ってくれたのが実に印象的でした。

 まとまった休みが取れたら、通学路など自分が歩いていた延岡の街を改めてじっくりと歩きたいそうです。「街の雰囲気を再確認したり、記憶をたどったり、自分にとってはそれが大切な故郷との向き合い方だと思っています」。さすがは照明マン。故郷の隅々まで視線を送り、しっかりと見詰めていたいのでしょうね。

 さて、遠田さんの「第3のテレビ局の誕生」の夢はいまだ実現できていませんが、いつかはCMやイベントなど照明の仕事を通して故郷へ恩返しをしたいと考えているそうです。その時は、いろいろな地域にスポットライトを当ててあげてください。そして吉永小百合さんの時以上に、多くの明かりを使って、故郷をより明るく照らしてくださいね。

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