日高亀市の功績を顕彰－土々呂・赤水

本紙掲載日：2022-09-07

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ぶり大尽の足跡マップ、市民グループが作る

◆全国の定置網漁を発展－画期的発明だった大敷網

　明治期にブリ大敷網を考案し、国内の近代定置網漁の基礎を築いた日高亀市（１８４５～１９１７）の功績や地域との関わりをまとめたマップを、地元延岡市の市民グループ「樫丸石（かしまるいし）護岸産業遺産を未来へ繋（つな）ぐ会」が作った。「ぶり大尽ｆｏｏｔｍａｒｋ（足跡）赤水、妙見、土々呂町編」と題した、手書き文字の手作りマップ。希望する人にはコピーを無料で提供している。

　明治２０年代までのブリ漁は、魚道に網を建てて網目に刺さった魚を取る建刺網（たてさしあみ）漁や、魚を垣網（かきあみ）で身網に誘導して取る台網（だいあみ）漁が全国的な主流だったという。網はわら縄製だった。

　これを画期的に飛躍させたのが、１８９２（明治２５）年、伊形村赤水（現延岡市赤水町）の日高亀市・栄三郎親子による大敷網の発明だった。身網すべてを麻製にしたことによって、耐久性、耐波性が増し、網の大型化、漁場の沖合化が可能になった。

　日高式大敷網は、県下から全国へとたちまち伝播していった。「世界大百科事典」（平凡社）にも「網漁業」「台網」など複数の項目に「技術革新は宮崎県の日高亀市・栄三郎父子によって行われた、日高式ブリ大敷網である」と書かれている。

　しかし延岡市民は、亀市がブリ漁で財を成した「ぶり大尽」であり、日高邸が「ぶり御殿」と呼ばれていることは知っていても、功績をはっきり知る人は少ない。そこで同グループは、市の市民まちづくり活動支援事業を一部活用して、マップ作りを企画した。

　マップには、日高家が赤水道路（２・６キロ）の全工費を負担したこと、妙見橋を無料で通行できるようにしたこと、自家の山林から良材を切り出して病院を造ったこと、名水小の施設整備に資金を提供したことなどが地域の旧跡と共に紹介されており、日高家の社会貢献事業が地域の発展に寄与したことが分かる。

　もう一つ、同グループがスポットを当てたいと考えているのがグループ名にもした「樫丸石」。同町の樫の浜で取れる長軸３０～５０センチの丸い石で、角がなく、網を傷つける心配がないことから、大敷網の重しに使われた。この石がなければ大敷網の成功もなかったかもしれないという。

　日高邸から土々呂への道路の護岸にも樫丸石が用いられており、現在も所々に見られる。その場所もマップで紹介している。

　日高式ブリ大敷網は、全国の定置網漁を発展させたことから、各地で顕彰されている。福井県高浜町漁村文化伝承館には「日髙亀市翁之像」が展示されているという。繋ぐ会は、今回の「赤水町、妙見町、土々呂町編」を手始めに、九州、全国編のマップも作る予定。

　会員の深田薫さん（４６）は、「埋もれてしまっている功績をマップにすることで、日高家の歴史が立派な観光資源になると思う。また、日本の水産業界に革命を起こした人が延岡にいることを知って、子どもたちがふるさとに誇りを、郷土愛と夢を持ってくれれば」と話した。

　マップは、料亭ひだか（電話延岡３７・０５３６、日高邸）が土、日曜日に行っている「テラスランチ」の営業時間（午前１１時～午後４時）に同店を訪れれば、無料で提供できるという。ただし数に限りがある。