台風１４号－延岡市内広範囲に浸水被害

本紙掲載日：2022-09-20

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北方町総合支所周辺が水没

　大型で非常に強い台風１４号は１８日午後７時ごろ鹿児島市に上陸、九州を縦断、東日本へと駆け抜けた。２０日午前９時、温帯低気圧に変わったが、気象庁が最大級の警戒を呼び掛けた台風は各地に爪痕を残して遠ざかっていった。本県では１９日午後以降、風雨が収まるにつれ、県北の被害状況が徐々に明らかとなってきた。（２、３、８面に台風関連記事）

　延岡市北方町では台風が最接近した１８日深夜から１９日未明にかけて五ケ瀬川の氾濫と内水氾濫が同時的に発生した模様で、市の北方総合支所や隣接施設の１階部分が水没するなど、中心部で浸水被害が発生。住宅や商店が立ち並ぶ曽木地区にも濁流が押し寄せた。

　総合支所によると、周辺では激しい雨が続いていた１８日夕方から、流れきらない山手からの雨水が道路や駐車場にたまり始めていたという。支所から５００メートルほど下流に住む男性（７７）は午後１１時ごろ、自宅近くを流れる五ケ瀬川の水が、手前の国道２１８号からあふれてきたのを見ていた。

　この時間から一帯は急速に浸水。町の名所だったうさぎ橋（つり橋）や上流の鉄橋が流失し、当時の旧北方町役場が浸水した２００５年の台風以来の水害となった。北方文化センターが入る総合支所１階が床から約３メートル、屋外駐車場からは４メートル近くの高さまで浸水。周辺の飲食店や商店、事業所なども泥水に飲まれた。

　一夜明けた１９日、五ケ瀬川沿いの国道は流木や泥に埋まり、川に面した金属フェンスは内側にも外側にも押し倒され、被害の激しさを物語った。同日明け方まで２階事務所に孤立状態となった総合支所職員は、「被害報告はあったが身動きが取れなかった。調査を急ぎたい」と話した。

◆五ケ瀬川から逆流－曽木に濁流、住宅など被害

　北方町では総合支所から直線距離で約２キロ離れた曽木地区中心部にも濁流が流れ込み、密集した多くの住宅や商店などが床上浸水。住民らによると、「２００５年の台風よりも水が上がった」という。

　主要道沿いに住む４０代女性は、「前の日に高台へ移動していた車に家族で避難して一夜を過ごしました。家の前ぐらいまでは水が来るかもと、階段に必要な荷物を上げていたのですが、まさかこんな急に押し寄せてくるとは思いませんでした」と振り返った。

　被害地区のすぐ近くには五ケ瀬川に注ぐ曽木川が流れているが、女性は「五ケ瀬川が逆流してきて、曽木川もあふれた」と、当時の状況を説明。一帯は建物内部も含め、水を多く含んだ泥に覆われ、地元消防団も駆け付け消火ホースなどで洗い流していたが、住民らは「泥水は隅々まで流れ込んでいるので、掃除が本当に大変。消毒も含め、いつまでかかるのやら」と疲れた表情を浮かべた。

◆北浦町で突風被害－屋根が１００メートル先に吹き飛ぶ－１８日午後にごう音、倉庫が損壊

　延岡市北浦町古江では突風被害による倉庫などの損壊が相次いで確認された。

　畜産業の河野正直さん（７０）は農業用倉庫を飛ばされた。「１８日の夕方だったと思いますが、隣の人に聞いて初めて被害があったことを知りました。この辺りはいつも強い風が吹くので、竜巻ではないのではないか」と振り返る。

　牛舎の隣にあった河野實男さん（７８）の農業倉庫も建物ごと吹き飛ばされた。太い木材とトタン屋根でできた倉庫は、柱と壁が道路（３８８号）を越えて約３０メートル先の田んぼに、屋根は約１００メートル離れた場所にあるビニールハウスまで飛ばされていた。「普通の風の音ではなかったし、吹いた時間も長かった。正直さんの所は１８日の午後３時ごろ、うちの倉庫が１９日の夜明け前に被害を受けたと思う。築２０年ほどの小屋ですが、根元から持って行かれた。こんなことは初めてで驚いています」

　實男さんが現場を見るために車で駆け付けるときには、強風で車が浮いたという。少し離れた場所にある自宅では育苗用のハウスが「ぺっちゃんこにつぶれた。上から相当強い風が吹いたのだと思います」。

　国道を挟んで山側にある戸髙俊和さん（６３）のほ場では、牛舎近くの木が２本倒れたほか、約４００平方メートルもある農業用倉庫の屋根が吹き飛ばされ、杉林に倒れ込んだ。「１８日の午後１時半から２時ごろの間だったでしょうか。ゴオッというごう音が聞こえた。家と牛舎が揺れる様子に恐ろしくなり、外に出たら倉庫の屋根が一気に浮いた」と戸髙さん。

　縦横約２０メートルに組んだ鉄骨と角材の丈夫な骨組みにプラスチック素材を組み合わせた屋根が丸ごとひっくり返った。柱の鉄骨はコンクリートで地中に固定されていたにもかかわらず、倒立した形で裏手の杉林にもたれかかっている状態。杉林側の壁はコンクリートの土台が一列に倒れている。

　農機具や生産資材を保管しておいた倉庫は、野ざらし状態でぼう然とする戸髙さん。「海から吹き込んだ風が、逃げ道がなくなり大きな力になったのでしょうか。驚くほかないし、処理するにも再建するにも、どうしようか途方に暮れています」と肩を落とした。

◆高千穂峡の遊歩道など被害

　高千穂町の高千穂峡では遊歩道の柵や路盤の一部が流されるなどの被害が出ている。

　町企画観光課によると、被害は真名井の滝を望む第１滝見台から神橋付近まで約７００～８００メートル。被害のなかった第２滝見台を除く遊歩道への立ち入りを禁止している。

　町などは２０日午前中から被害状況を調べているが、規模は２００５年に襲来した台風１４号と同等かそれ以上で復旧のメドは立っていない。これまでの被害では、柵の付け替え程度で済んでいたが、今回は根本的な整備が必要ではないかという。

　今後は、第２滝見台を中心に観光客を受け入れ、第１滝見台から順次復旧作業を行う予定。同課の谷川祐一課長補佐は「高千穂峡は（町の）観光のシンボル。安心安全に楽しんでいただけるよう、一日でも早い復旧に向けて取り組みたい」と話した。