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寄り添う空き家バンク-美郷町

本紙掲載日:2022-09-05
1面

移住・定住者、年々増加-美郷町

◆担当職員・オーダーメードで移住ツアー

 県内で高齢化率が最も高く、人口の自然増加率が最も低い美郷町。さらなる人口減少が懸念される中、「空き家バンク」を活用した移住・定住の取り組みが注目されている。担当するのは町政策推進室の職員。ホームページの充実や移住希望者に寄り添った「オーダーメードツアー」を展開し、相談件数、移住者数が共に年々増加している。

 同町の人口は、2010年から20年の10年間で1420人減少した。高齢化率は12年連続で県内トップ、自然増比率も県内ワースト1。過疎化は町の取り組むべき重要課題の一つになっている。

 こうした状況の中、町は16年に人口減少対策の一つとして庁内に定住移住担当(者)を設けた。

 町によると、初年の新規移住相談件数(町外から)は25件。翌17年も23件でほぼ横ばいだったが、18年は40件に急増。以降19年75件、20年96件、21年は172件まで伸びた。移住者数(県内外)も18年3世帯4人、19年7世帯10人、20年12世帯22人、21年22世帯39人と純増している。

 増加要因の一つには、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、全国的に「地方移住」「テレワーク」への関心が高まっていることが挙げられる。

 だが、相談件数が一気に増え始めたのは、新型コロナ流行前の18年。なぜ、増えたのか。それは、他市町村と差別化を図った「空き家バンク」と担当者による新たな取り組みが奏功したと思われる。

◆ホームページを充実-担当の川西さん・写真撮影を工夫

 中心で活動するのは同年に定住促進担当に着任した町政策推進室主幹の川西邦明さん。当時から町は空き家バンクを導入していたが、サイト上の情報は空き家の写真がなく、文字のみの簡易的なものだった。「移住相談の9割が空き家バンク経由。サイトの情報は大事なんです」。そう思った川西さんは内容充実に着手する。

 さまざまな掲載様式を調べ、不動産での勤務経験がある役場職員から写真の撮り方を学んだ。構図や撮影する時間帯を工夫し、家から見える景色も加えるなど「住みたいという、本能に刺さるような写真」を目指したという。

 他市町村の多くは、外観のみで内装写真があっても数枚程度。それに比べ、美郷町の空き家バンクは10枚以上の写真に加え間取り図を掲載した。現在、契約交渉が進んでいる北郷の物件は28枚もの写真を使って細かく紹介している。

 7月末までに空き家バンクに登録された物件は計93軒。うち63軒で購入や賃借が成立。今月も新たに7件の空き家が登録された。

◆SNSでも発信

 20年からは、町の公式インスタグラム(19年開設)を利用し、週3回、移住相談や空き家情報を発信している。「インスタ見ました」などの声が掛かるようになり、「少しずつだが町内外に浸透してきた」と感じているという。

 また、これまで実施していた個別相談を「オーダーメード移住ツアー」と銘打って開催。「移住には住居、仕事、子育て、コミュニティーの四つの悩みがある。さらに年代や単身か世帯かどうかでも悩みは変わってくる」と一組ずつ親身に対応。その際にはメリットだけでなく、リフォーム金額や所在地が土砂災害警戒区域であることなど、デメリットもしっかり伝えている。

 これらの取り組みの中で、川西さんが一番大事にしているのは「定住政策は、町民のためでなければ意味がない」ということ。その思いから、空き家バンクは町民も利用でき、町内移住や事業所、店舗としても活用可能となっている。

 町外からの移住希望者に対しても、最初にコミュニティーの重要性を説く。その上で最低でも1度、来町しないと契約できない定めになっている。

 移住は単に住所や家だけではなく、生活スタイル、ひいては人生も変える大きな出来事。「まずは現地に来て、五感で町を感じてほしい。その時、移住希望者にとって〃第一町人(まちびと)〃の私は、町の代表でもある。しっかり対応し、美郷の魅力を伝えていきたい」と語った。

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