全国組織設立へ準備会

県内保存会などが発起人−ユネスコ登録目指す

◆神楽への情熱と愛、次世代に

　国の重要無形民俗文化財に指定されている神楽保存団体の全国組織設立に向けて１１日、準備会が発足した。日本を代表する伝統文化の民俗芸能「神楽」の保存・継承を目的に九州の指定保存団体で構成、準備を進めてきた「九州の神楽ネットワーク協議会」が移行する形で設立された。全国組織設立は今年度から来年度初めごろ、当初から掲げるユネスコ無形文化遺産登録は２０２６年中を目指す。

　設立を目指す全国組織の名称は「全国神楽継承・振興協議会」を予定。準備会は、九州で国の重要無形民俗文化財指定を受ける宮崎、福岡、長崎、熊本、大分県の１０地域の神楽の保存会と東京都、愛知県、長野県の４地域の神楽の保存会が発起人となった。

　宮崎市の県企業局県電ホールで同日、九州神楽ネットワーク協議会の総会に続いて、準備会の立ち上げが協議され、会規約などの議案を承認。準備会会長は同協議会会長で高千穂の夜神楽伝承協議会会長、高千穂神社宮司の後藤俊彦氏、副会長は愛知県の北設楽郡花祭保存会会長の尾林克時氏を選んだ。

　規約によると、準備会は、各地域の神楽の保存・継承などに関する諸課題の情報共有や解決に向けた意見交換、情報発信などに取り組む全国組織設立の目的達成のため、組織や規約、設立までのスケジュールに関する検討、ユネスコ無形文化遺産登録に向けた情報収集など、必要な事業を行う。
　
全国組織設立趣意書では、少子高齢化や人口減による継承の困難さから、「毎年、休止・廃絶を余儀なくされる団体は一、二にとどまらない」と窮状を訴え、継承推進や地域振興への寄与を目的とした全国組織の必要性を強調。今後、全国の指定保存団体などに準備会加入の案内や訪問・説明などを行っていくという。

　今回、準備会に移行した九州の神楽ネットワーク協議会は、会員相互の情報交換や交流を通して、九州の神楽の保存・継承、情報発信を推進するとともに、ユネスコ無形文化遺産登録を目指し、１６年１１月に設立。情報誌の発行や情報交換会の開催のほか、全国の団体に全国組織設立の説明を行うなど、準備を進めていた。

　後藤会長は「必要なのは神楽への情熱と愛、次世代に伝えていこうという気持ち。目的の達成まで一つ一つ課題を解決し、力を合わせながら頑張りたい」と抱負。出席していた文化庁の吉田純子調査官は、「ユネスコ登録をゴールにしないでほしい。保存・継承のための一つの手法であり、登録だけに頼っては効果は長続きしない。未来を見据えて取り組んでほしい」と助言していた。