宮交ＨＤ－聖域なき改革を断行

本紙掲載日：2021-03-26

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次期経営計画を説明する宮交ホールディングスの菊池克賴社長

菊池社長、数年かけ成長させたい

　宮崎交通など６社を傘下とする宮交ホールディングス（ＨＤ）は２４日、新型コロナウイルス感染拡大で急激に悪化した業績の回復を目指す次期経営計画を発表した。役員人事を含めた大胆な経営再編に取り組む。

　菊池克賴社長は冒頭、同社がコロナ禍により「２００５年の設立以来、経験したことのない会社存亡の危機の渦中にある」と説明。２０年度は金融機関からの資金調達や補助金活用、路線・高速バスの減便や運休、営業時間短縮・休業、設備投資の原則凍結、役員報酬のカット、新規採用の抑制などに努め、コスト削減額は当初目標の１７億円を上回る約２３億円となる見込みを報告した。

　また、県内旅行窓口を１３カ所から２カ所へ集約、担当職員を９０人から３４人に縮小して３億円弱の費用を削減。宮交タクシーは西都営業所を閉鎖、一部レストランを閉店し、税制上の優遇措置を受けやすくするため宮交観光ホテルの減資を図るなど、「聖域なき改革」を断行してきたという。

　それでも損失の穴埋めは限定的で、年間業績は売上高に当たる営業収入が１９年度比８１億円減の１０４億３４００万円になると試算。もうけを示す営業損益は３８億円減で３１億８３００万円の赤字、経常損益も２０億３８００万円の赤字と、過去最悪の減収減益を見込む。

　国内では新型コロナワクチンの接種が始まったが、同社は２１年度も非常に厳しい経営環境が続くと判断。このため、いかなる外部環境でも黒字を確保できるよう、さらなる事業構造改革施策を打ち出した。

　バス事業では、社会基盤である路線バスの路線網維持を前提としつつ、赤字解消に向けた県・市町村との協議をさらに進める。高速バスは需給バランスを注視し、従来から赤字の延岡線や大分、鹿児島線は４月から休廃止。宮交タクシーが担ってきた貸し切りバス事業を一元化し、台数削減などで効率的に稼働する。

　宮崎観光ホテルは、西館の８～１０階を宮崎交通と宮交ＨＤの本社オフィスに転用し、客室の賃貸事務所化、テナント誘致などで費用削減と収入確保を両立。東館は県外客向けの高級志向、西館はレジャー感覚での手軽さと親しみやすさを打ち出した地域密着型の複合施設へと色分けする。

　また、直営レストラン６店を３店に集約。宮崎交通熱源センターと宮崎ビルサービスを統合して、ビルメンテナンスに特化した宮崎ビルマネジメントを設立する。宮交シティは旅行窓口を南宮崎駅前の自社ビルに移転・集約し、バス待合所も大幅に縮小。保険部門は国内大手と提携して事業拡大し、自社ビルにオフィスを構える。

　こうした経営計画の実行により、２２年度は営業損益をマイナス２億９０００万円、経常損益を同４億９８００万円まで圧縮。２３年度にはそれぞれ５億２６００万円と２億５７００万円の黒字へ転換させるとしている。

　一連の改革に向けた役員人事を６月２３日の株主総会に提案。菊池社長（７０）と宮崎交通社長の川端史敏氏（６５）は退任してそれぞれ会長に就任し、宮交ＨＤの新社長には宮崎交通顧問の渡辺俊隆氏（６２）、宮崎交通社長には宮交ＨＤ常務取締役の髙橋光治氏（６２）を起用するなど、グループ７社のうち４社長を交代させる方針という。

　菊池社長は役員報酬を現在２０％から新年度は３５％まで削り、労使間で給与のベースアップと一時金の見送りを協議するなど、全社を挙げた身を切る改革になると強調。一方で雇用は守り抜くと誓い、「数年かけて取り組み、しっかりとした宮交に成長させていきたい」と力を込めた。