のべおか天下一薪能－ろうそく紗幕に石垣

本紙掲載日：2021-10-11

3面

舞台に趣向凝らし－

◆根付く能文化光った子どもたち

　新型コロナウイルス感染防止のため、やむなく屋内での公演となった「第２４回のべおか天下一薪能（てんがいちたきぎのう）」。舞台の正面には灯をともしたろうそくが飾られ、延岡城址（し）の石垣に思いをはせた背景には、２本の松の生木や「千人殺し」の石垣をイメージした紗幕（しゃまく）が設置され、工夫を凝らした趣あるしつらえで観客約６００人を迎えた。舞台に出演した地元の子ども５人の姿も光った。（後日、写真特集を掲載）

　能「橋弁慶（はしべんけい）」で、片山九郎右衛門さん演じた武蔵坊弁慶の従者役を堂々と務めた川﨑将宏さん（１２）＝延岡東小６年＝は「緊張したが、失敗できないという気持ちで臨んだ。片山さんと一緒に舞台に立てて、すごくうれしかった」と笑顔。

　最大の見せ場、牛若丸と弁慶の斬り合いの場面では、下沖花萌（はるも）さん（１７）＝延岡星雲高２年＝が張りのある謡と軽やかな身のこなしで、牛若丸役を見事に演じた。「緊張で足が震えたが、今までで一番声が出せた。大役を果たせたことを自信にしたい」と話した。

　また、友清茉耶さん（９）＝延岡小３年＝、鮎川愛美さん（１７）＝延岡星雲高２年＝、下沖美乃莉さん（１５）＝西階中３年＝は、それぞれ伸びやかに仕舞を披露した。大蔵流狂言師の茂山千五郎さん、茂山千之丞さんによる狂言「仏師（ぶっし）」もあり、息の合った掛け合いで笑わせた。

　同薪能は１９９７年から毎年続けられており、昨年は新型コロナウイルスの影響で延期され、国文祭・芸文祭みやざき２０２０分野別フェスティバルの一つとして今回、２年ぶりに行われた。また例年、約千人の市民ボランティアが１カ月以上かけて延岡城址に会場を設営してきたが、感染の収束が見通せない中、主催するＮＰＯ法人天下一市民交流機構は「作業は困難」と判断。雨天時に対応でき換気システムも整っている延岡総合文化センターへの会場変更を決めた。

　同交流機構の松下宏理事長（７６）は「感染対策を最優先に取り組んできた。無事にきょうを迎えられてほっとしている。出演した子どもたちのりんとした姿に感動した。集中して舞台に見入るお客さまの姿にも驚いた。延岡に能の文化が根付いていることを改めて感じた」。

　同センターの外庭には、「天下一」などと書かれたのぼり旗やちょうちん、市民グループ・のべおか彩（いろどり）の会（髙橋忠彦会長、３１人）による竹灯ろうなどが飾られ、これまでと変わらず、幻想的な明かりで彩られた。

　毎回訪れているという長渡靖夫さん（７６）＝同市富美山町＝は「今回は屋内での公演だったが、会場の飾り付けも工夫されていて良かった」。延岡高校３年の増田和さん（１７）＝同市野田町＝は「『葵上』のあらすじを予習して見に来た。鬼へと姿を変えた御息所が面でも表現されていて興味深かった」と話した。