「災害レベル」で対応－新型コロナで緊急対策会議

本紙掲載日：2022-07-21

3面

入院対応などについて熱心に協議した新型コロナ緊急対策会議（延岡市医師会病院）

軽症－重症・４分類しトリアージ

◆９月中旬まで感染拡大か－延岡市の関係機関

　新型コロナウイルスの急激な感染拡大に伴い県北の医療態勢が危機的状況を迎えたとして、延岡市の関係機関が一堂に会しての緊急対策会議が２０日夜、市医師会病院で開かれた。１８日に発生した事態を教訓に、各分野が連携して「災害レベル」で対応することを申し合わせた。

◇３連休明けに相次いだ受け入れ要請－県立延岡病院

　はじめに、県立延岡病院（県病院）の寺尾公成院長が３連休最終の１８日の対応を報告。県北の「命のとりで」である３次医療機関として、より高度なケアが必要な患者の治療に当たりつつも、相次いだ新型コロナ患者の救急受け入れ要請が「〃医療崩壊〃を警鐘するかのようだった」と振り返った。

　寺尾院長によると、その日の中で最も重症だった傷病者を処置中の１８日夜～１９日朝にかけ、小児から高齢者まで５人の新型コロナ患者の受け入れ要請が集中。たまたま救命救急センター長がいたことと、感染者の入院・療養調整に当たる県新型コロナ対策調整本部の佐藤圭創特任医師に、市医師会病院で対応してもらえたことで急場をしのげたという。

　県病院内では職員と患者を含む院内感染が発生した影響で、稼働の病棟や職員を制約。新型コロナ患者専用の部屋は７階病棟に１３室あり、家庭内感染などに対応した２人部屋、４人部屋を含め、現在（２０日午後３時時点）は２１人が入っているという。

◇自宅療養に切り替えてもらったケースも

　入院中の感染者は肺炎がある中等症Ⅱ以上、脳外科疾患、整形外科疾患、小児疾患、院内感染した入院患者と多様で、出産間近を含め２人の妊婦もいたが自宅療養に切り替えてもらったという。

　寺尾院長は西臼杵や日向、入郷地域を含む人口２２万人の命を預かる中核医療病院として、これまでのコロナ禍同様に機能を止めるわけにはいかないと強調。ほかの医療機関も共倒れしないよう、特に夜間救急をはじめとする新型コロナの一時対応をどうするのか、「完璧ではなくても、後手に回ることのない態勢を構築できれば」と協力を呼び掛けた。

◇未接種者を中心に肺炎症状が急増

　佐藤特任医師は重症患者が少ないと報道されていることに対し、「ＢＡ・５」ウイルスへの置き換わりに伴い、現場ではワクチン未接種の感染者を中心に肺炎症状が急増していると報告。市内の宿泊療養施設では約半数の感染者に肺症状が出ていると訴えた。

　一方、諸外国の状況に照らし合わせ、日本国内では今後さらに感染者数の急増が続き、ピーク時にはオミクロン株（第６波）の１・５～１・６倍に達すると予測。感染者数が多い状態が９月中旬まで続くと見込みを示した。

　さらなる感染状況の悪化が確実視される中、市医師会の佐藤信博会長は、まずは県病院の３次医療を守るため、夜間・休日対応を主眼とした救急要請などの判断に、災害トリアージ並みのプロコトール（手順、ルール）を共有するよう提案。夜間急病センターや各医療機関、訪問看護ステーション、訪問診療医、医師会の在宅療養管理など現場関係者に周知を求めた。

　プロコトールは佐藤特任医師が案をまとめ、呼吸器症状や摂食・飲水の可否、脱水症状、意識・血圧状態の程度などによって軽症－重症に４分類。中等症Ⅰ以上は宿泊療養施設、２次医療機関、県病院に振り分けることとした。

◇入所施設は完結型在宅は早期投薬で

　対応案を基に関係機関同士が意見交換し、介護が必要な高齢者・障害者施設の利用者が感染した場合は、安易に救急車を要請しないことで一致。施設内で感染者が出ると、現場従事者が慌てて救急要請するケースがあるが、一度入院を受け入れると介護対応や併発症状などで、ベッドが１カ月間埋まるという。

　国の方針でも利用者が感染した場合は施設内で隔離治療することになっており、必要な医療人材を外部から投入することを再確認。在宅医療の現場からは、感染者の容体悪化に迅速に対応できるよう、薬剤をはじめとする医療資材の十分な配備を求める声が多く、医療機関は新型コロナの陽性が分かった時点で積極的に経口薬などを処方するよう申し合わせた。

◇ぜひワクチン接種を

　救急車対応の難しさや精神科医院では１人の感染が現場崩壊につながるという危機感、いくつも受け入れを断られ県病院を頼るしかない消防職員の苦悩など数多くの声が上がり、予定時間を超えても協議が終わらず、閉会後も関係者が集まって熱心に打ち合わせを続けた。

　佐藤医師会長は「コロナ禍で疲弊しているのは分かるが、感染症はそうした思いとは関係なく疫学で動いている。ワクチンを打っていない人が重症化しているのは間違いがないので、未接種の方は家族だけでなく社会のためにも、ぜひ接種を検討してほしい」と訴えている。